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「熱意」の前向き経営

先日、テレビ東京の「実録世界のミステリー」という番組で、
シーツと新聞紙で脱獄した受刑者の話が放送されていました。

彼は腕利きの大工職人だったのですが、
ガソリンスタンドで現金を強盗し、
追ってきた警察官を射殺。
その罪で2006年アメリカオハイオ州の刑務所に入りました。

彼には、妻と3人の子供がいて、
「なんとしても彼らのもとに帰りたい」と思い、
「脱獄」を決意します。

彼は刑務所内を隈なく見て回り、
建物の様々な情報を読み取っていきました。

そこで部屋の壁の溝に注目します。
壁はブロックを積み上げて作られており、
その接合している溝はやわらかく
そこを削っていけば、
1か月で一つのブロックを取り外せ、
隣の建物の屋根伝いに外に出られると見立てたのです。

しかし大きな問題がありました。
看守が1日5回見回りに来るのです。

彼は看守の目をかいくぐり
壁の溝を削るある方法を思いつきました。

まず削る道具として、
部屋の中にある換気口の金属板を、
コーヒーカップを使って1枚だけはずしました。

次に削っている壁の溝を隠すために、
希望すれば受刑者に支給される
「歯磨き粉」と「ベビーパウダー」、
それからトランプの賭けで勝った「青と緑の飴玉」
これらを混ぜ合わせてお湯で溶かし、
壁と同じ色の塗料を作りました。

この塗料を看守が来る前に溝に塗って、
わからないようにしたのです。

溝が深くなり、金属板の長さが足りなると、
ほうきに縛り付けてある針金を使い、
2枚の金属板をつなぎ合わせ、
更に作業を進めていきました。

そしてついにブロックがはずれ、
その先にある薄い壁を削れば
脱獄できるところまで来たのです。

そんな時に彼にとって最大のピンチが訪れます。

溝を削り始めてから1カ月経ったある金曜日、
いつもより早く看守が見回りに来ました。

塗装がまだ十分に乾いておらず、
やわらかかったために、
看守が気づいてしまいました。

看守は壁を削っていることには気付きませんでしたが、
建物が古くなったためと思い、
週明けの月曜日に、修理をすることを彼に告げました。

残り2日間の間に何とかしなければ、
彼の企ては分かってしまいます。

猶予はあと2日。

そこで彼は、新たな脱獄方法を考え出します。

それは、体育館の窓から逃げ出すというものです。

夏場だったせいか、体育館の5メートルの高さにある窓が、
一つだけ空いていたのです。

そこで彼は、「シーツ」「新聞紙」「ダクトテープ」「金属板」
を手に入れました。

シーツを破ってねじり、ロープを作り、
S字にした金属板をその先に縛り付け、
新閔紙を巻きつけダクトテープで補強したものを足場とし、
簡易的な「ハシゴ」を作りました。

更にダクトテープで補強した新聞紙の筒をつなぎ合わせ、
長さ5メートルの「棒」を作りました。

体育館には私物の持ち込みが禁止されていたので、
分解した「ハシゴ」と「棒」を体に巻きつけ、
受刑服を二重に重ね着し、無事入管チェックを通過しました。

体育館での自由時間は1時間。
看守の目が甘い最初の10分が狙い目です。

受刑者達は全員彼の計画を知っていましたが、
トランプの賭けなどでサービスをして
仲良くなっていたので、
見て見ぬふりをしてくれました。

そして「ハシゴ」と「棒」を使って、
看守が見ていない隙をつき、
5メートルの窓から脱獄に成功しました。

逃走した彼は森に逃げ込み、
偶然見つけた材木置き場に、
小さな小屋を作り、
ハローウィンの日まで
3か月間隠れることにしました。

ハローウィンで町中仮装した人があふれている時なら、
自分も仮装して遠くに逃げることが出来るからです。

しかし間もなくハローウィンを迎えるという頃、
たまたま様子を見に来た
材木置き場の管理人に小屋を見つけられ、
警察に捕まりました。

彼が行った「脱獄」という行為を称賛することはできません。

しかし、
彼の「なんとしても家族のもとに帰りたい」
という「熱意」が、
様々なアイディアを思いつかせたのは、
勉強になります。

刑務所という究極の限られた環境の中で、
「歯磨き粉」「ベビーパウダー」「飴玉」から塗料を、
コーヒーカップで外した換気口の「金属板」
で溝を削ることを思いつきます。

そして、看守に削っていた溝を発見され
猶予が2日となっても、
新たな「ハシゴ」での脱走方法を思いつくのです。

「なんとしてもやるという熱意」

これが、とても大事なことなのではないでしょうか。

これとほぼ同じことを、松下幸之助氏が
「道をひらく考え方」の中で言っています。

「私はもういままでずいぶん人にも働いてもらっていますが、
なるほど偉い人、というとおかしいが、
本当に間に合う人というものは熱心ですな、熱意のある人ですな。
まあ早く言えば、この二階へあがりたいと、こういうときに、
なんとかして二階へあがりたいという熱意のある人は、
これ考えますよ、ハシゴを考えますよ、実際は。
この二階へあがりたいなということが非常にもう熱烈やと
“どないして上がるか”と、こうなるんですな。
するとハシゴというようなものを考えるやろうと私思うんですよ。
“この二階にあがってみたいなぁ”ではハシゴは考えられませんわ。
“なんとしてもこの二階へ上がる。俺の唯一の目的はこの二階に上がることだ”
というような熱意があれば、私はハシゴを考えると思うんですね。」

-松下幸之助「道をひらく考え方」-

「何としても2階に上がりたい」
こんな「熱意」を持っていたいと思います。